突然の股関節痛では、冷やす前に転倒や衝突の有無と、立つ・歩く・患側へ体重をかける動作が可能かを確認する。外傷後の激痛や荷重不能、発熱を伴う熱感と腫れ、けが後のしびれがあれば、自宅で経過を見る段階ではない。

痛みは脚の付け根、股関節の外側、太もも、臀部に現れ、腰など別の部位から響く場合もある。オーストラリア政府系のhealthdirectは、骨や関節、周囲の筋肉・靱帯・腱、神経、腰からの関連痛まで原因の幅があり、痛みが続く場合は医師らの評価を受けるよう示している。場所だけで病名を決めず、最初の対応は救急性と安全な移動の判断に絞る。

外傷後の激痛・荷重不能は119番

転倒や衝突の後に股関節が激しく痛む、立てない、歩けない、患側へ体重をかけられない、股関節や脚を動かせない場合は、直ちに救急外来へつなぐ。脚が変形している、強い皮下出血や出血がある、けがの後にしびれや感覚低下が出た場合も同じだ。英国の公的医療サービスNHSは、外傷後の激痛、歩行・荷重不能、外傷後のしびれや感覚低下を、直ちに救急部門へ向かう兆候としている

本人を安全に車へ乗せられない、痛みが激しい、重い外傷が疑われる場合は119番へ通報し、痛む脚で歩行を繰り返し試さない。総務省消防庁は、119番通報を受けると指令員が救急車の出動に必要な内容を順に尋ね、緊急性が高ければ聞き取りの途中でも出動すると案内している。住所、連絡先、転倒や衝突の経過、出血、意識、歩行の可否を伝える。

高齢者が転倒した後に脚の付け根を痛がり、立てなくなった場合も救急評価を急ぐ。日本整形外科学会は、大腿骨頸部骨折では股関節部が痛み、多くの場合に立位や歩行が難しくなり、高齢者が転倒後に立てなければX線で確認すると説明している。外見だけで骨折の有無を判断しない。

明らかな外傷がなくても、突然の激痛に熱感、腫れ、皮膚の色の変化、発熱、悪寒、全身の不調が重なる場合は、当日中に医療機関へ連絡する。痛みが悪化し、排尿や排便が難しくなった場合は救急評価が要る。米国国立医学図書館のMedlinePlusは、重い外傷後の急な股関節痛、変形や出血、荷重不能に加え、悪化する痛みと排尿・排便困難の組み合わせを救急支援の対象としている

転倒後に床へ座って股関節を押さえる成人と、そばで支援する家族(イメージ)

警告サインがなければ負荷を減らす

痛みを強める動作を止める。 走る、跳ぶ、深くしゃがむ、重い物を運ぶ、階段を繰り返す動作はいったん中断する。安全に立てて歩ける場合は短い距離の移動にとどめ、痛みが強まれば休む。痛みの原因を確かめようとして、同じ動作を何度も試さない。

冷却は布越しに短時間使う。 NHSの成人向け資料は、保冷剤や冷凍食品の袋をタオルで包み、痛む場所へ最長20分、2〜3時間おきに当てる方法を示している。皮膚へ直接当てず、冷却で病名や重症度を判断しない。外傷後の激痛、荷重不能、しびれ、発熱を伴う腫れがあれば、冷却より受診を優先する。

原因が確定していない急な股関節痛について、冷却を20分・2〜3時間おきとする日本の全国共通の公的手順は、本稿の執筆時点で確認できていない。この数値はNHSの一般向け案内であり、痛みの短期的な緩和策として扱う。

横になる姿勢を調整する。 横向きなら痛くない側を下にし、両脚の間へ枕を置く方法がある。MedlinePlusはこの姿勢を自宅で痛みを和らげる選択肢に挙げている。寝返りで痛みが増す場合は無理に同じ姿勢を続けず、楽な位置へ戻す。

タオルで包んだ保冷剤を股関節の外側へ当て、時計で時間を確認する成人(イメージ)

悪化と生活への支障は期限を待たない

自宅対応後も痛みが増す、繰り返す、跛行が始まる、階段や歩行が難しくなる、睡眠や日常生活を妨げる場合は、日数を待たず整形外科などへ相談する。発熱、腫れ、荷重不能、感覚異常が加わった場合は、前段の基準で救急性を判断する。

受診までの期間は公的資料でも同じではない。MedlinePlusは自宅対応を1週間続けても痛む場合に医療者への連絡を案内し、NHSは2週間で改善しない場合を通常受診の目安に挙げる。1週間または2週間を、悪化していても待つ期限とは扱わない。

診察では、痛みが始まった時刻、転倒や衝突の有無、立位・歩行・荷重が可能か、痛む場所、発熱や腫れ、しびれ、排尿・排便の変化、服用中の薬を伝える。受傷後の経過が分かると、診察と必要な画像検査を選ぶ材料になる。

股関節の冷却に使う保冷剤と、皮膚を保護するタオル(イメージ)

避けたい対応──無理な歩行と薬の自己調整

転倒後に無理に歩いて確かめない。 激痛、荷重不能、変形、出血、しびれがある時は、マッサージやストレッチを始めず救急評価へつなぐ。少し動かせるという情報だけで重い損傷を除外しない。

保冷剤を皮膚へ直接当て続けない。 タオルで包み、1回20分を超えない。冷たさを我慢したり、そのまま眠ったりする使い方は避ける。冷却で痛みが一時的に軽くなっても、外傷歴や荷重不能などの警告サインは消えない。

痛む場所から病名を決めない。 脚の付け根、外側、太もも、臀部という位置は診察の手掛かりだが、単独では診断にならない。手元に残った処方薬を使う、処方中の薬を止める、市販鎮痛薬を追加する判断も、持病と常用薬を確認せずに行わない。

小児、妊婦、持病・常用薬がある人

小児。 成人向けの観察期間や冷却手順を先に当てはめない。股関節、大腿、膝が突然痛む、跛行する、片脚へ体重をかけられない場合は、速やかに医師の診察を受ける。NHSは、小児の急な股関節・大腿・膝の痛み、跛行、片脚への荷重不能を早急な医療相談の対象とし、発熱、悪化、2週間続く痛み、いったん軽快した後の再発も再評価するよう示している

妊婦。 市販鎮痛薬を自分で選んだり、妊娠判明を理由に処方薬を中断したりしない。厚生労働省は、薬局やドラッグストアの医薬品にも妊娠中に使えないものがあり、使用開始や処方薬の中断を自己判断せず、医師または薬剤師へ相談するよう案内している。新しい股関節痛は産科の担当者にも伝え、外傷後の激痛、荷重不能、発熱や腫れがあれば救急の基準を優先する。

持病や常用薬がある人。 長期にステロイド薬を使っている人の突然の股関節痛について、MedlinePlusは医療者への連絡を求めている。薬を急に止めず、持病と服薬内容を受診先へ伝える。医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、処方薬の用量変更や中止を自己判断で行わず、市販薬を含む使用中の医薬品を医師や薬剤師へすべて伝えるよう求めている

痛くない側を下にして横向きになり、両脚の間へ枕を置く成人(イメージ)

よくある質問

股関節痛の開始時刻、転倒歴、歩行と荷重の可否を記録したノート(イメージ)

突然痛んだ時、最初に冷やすのか
最初は活動を止め、転倒や衝突の有無、立てるか、歩けるか、患側へ体重をかけられるかを確認する。警告サインがなく安全に動ける場合に、布で包んだ保冷剤を最長20分使う。

転倒後も歩ければ自宅で様子を見てよいか
歩けるという一点だけでは決めない。痛みが強い、悪化する、腫れや皮下出血が広がる、歩き方が変わる場合は早めに医療機関へ相談する。高齢者が転倒後に立てない場合は救急評価を急ぐ。

何日治らなければ受診するのか
案内は1週間と2週間に分かれる。痛みの悪化、反復、跛行、階段や睡眠、日常生活への支障があれば、その期間を待たずに受診する。外傷後の激痛、荷重不能、感覚異常、発熱を伴う腫れは直ちに対応する。

受診時に何を伝えるのか
発症時刻、外傷の有無、歩行と荷重の可否、発熱、腫れ、皮膚の色、しびれ、排尿・排便の変化、持病、使用中の薬を伝える。転倒時の状況や症状の変化も時系列で整理する。