「足首を捻挫した」と見えるけがでも、家庭では骨折や脱臼を除外できない。まず変形、激痛、足先の色や感覚の異常、体重をかけられるかを確認し、救急受診が必要な状態を先に分ける。

重い損傷が疑われなければ、痛みを強める動作を止め、患部を保護する。その後は完全に動かさない期間を長引かせず、症状に応じて荷重と運動を戻す。2019年に提案された「PEACE & LOVE」は、この急性期から回復期までをつないだ考え方だ。

先に確認する救急受診の兆候

足首が不自然な角度に変形している、骨が見えるか深い傷がある、足先が白色または青色になった、足先がしびれる場合は、直ちに救急外来を受診する。激痛で安全に移動できない場合は119番へつなぐ。英国の公的医療サービスNHSは、足首の変形、骨の露出や深い創傷、激痛、足趾が白色・青色になる状態、足趾の感覚消失を直ちに救急評価する兆候としている

受傷直後から体重をかけられない、数歩も歩けない、くるぶしなど骨の上を押すと強く痛む、腫れや皮下出血が急速に広がる、受傷時に割れるような音がした場合も、当日中を目安に整形外科や救急外来で評価を受ける。日本整形外科学会は、足関節骨折では痛み、腫れ、皮下出血、変形がみられ、足を着いた歩行が難しくなり、X線検査で確定すると説明している

腫れが軽い、少し歩けるという情報だけで骨折は否定できない。日本整形外科学会は、捻挫を骨折や脱臼を除いた関節のけがと位置づけ、痛む場所や関節の緩みを診察して判断するとしている。迷う場合は、総務省消防庁が家庭での緊急度判断を支援するために公開している「緊急度判定プロトコルver.3」も受診先を決める手掛かりになる。

病院の救急外来へ続く通路(イメージ)

PEACE & LOVEは診療指針ではなく提案

British Journal of Sports Medicineに2019年にオンライン公開された論説は、軟部組織損傷の直後をPEACE、その後をLOVEで整理した。PEACEは保護(Protect)、挙上(Elevate)、抗炎症手段を避ける(Avoid anti-inflammatory modalities)、圧迫(Compress)、説明・理解(Educate)の頭文字である。保護は1〜3日を目安とし、痛みを判断材料に終える構成だ。

LOVEは荷重(Load)、回復への見通し(Optimism)、血流を促す活動(Vascularisation)、運動(Exercise)を指す。論説は、最初の数日を過ぎたら症状を悪化させない範囲で日常動作と運動を戻す考え方を示した。ただし、論説は個別の患者を対象に推奨を評価した診療ガイドラインではない。挙上の根拠は弱い、圧迫の研究結果は一致しない、有酸素運動の量は研究が要るとも記している。

この枠組みがRICEを国内で全面的に置き換えたとは確認できない。日本スポーツ整形外科学会の一般向け資料は、安静・冷却・圧迫・挙上から成るRICEをスポーツ外傷の応急処置として現在も掲載している。PEACE & LOVEを日本の公的な標準手順として採用した資料は、本稿の執筆時点で確認できていない。

自宅での初期対応──保護、挙上、圧迫、冷却

保護。 警告サインがなければ、走る、跳ぶ、無理に歩くなど、痛みを増す動作を止める。足首を自分で強くひねって戻したり、痛む場所を強くもんだりしない。移動が必要な場合は、壁や人につかまって無理に歩くより、使用法を理解している杖や松葉杖などで荷重を減らす。

挙上。 横になるか座り、無理のない範囲で足首を心臓より高く保つ。PEACE & LOVEの論説も、挙上は根拠が弱いと明記している。腫れが引く速さを保証する方法として扱わない。

圧迫。 弾性包帯を使う場合は軽く支える程度とし、きつく巻き上げない。日本スポーツ整形外科学会のRICE資料は、圧迫中に足先のしびれ、感覚、皮膚と爪の色を時々確認するよう示している。しびれ、色の変化、冷たさ、痛みの増加が出たら直ちに緩め、改善しなければ受診する。

冷却。 冷却は必須ではないが、短時間の痛みの緩和を目的に選ぶ余地がある。使う場合は氷や保冷剤をタオルで包み、1回15〜20分以内とし、皮膚へ直接当てたまま眠らない。PEACE & LOVEの論説は冷却の有効性を示す質の高い根拠がないとして使用を疑問視したが、冷却が人の足関節捻挫の回復を遅らせると確定したわけでもない。長時間続ける、感覚がなくなるまで我慢する、冷却の反応で骨折の有無を判断する使い方は避ける。

薬。 PEACEのAは抗炎症手段を避ける提案だが、処方薬を中止する指示ではない。2018年の足関節捻挫診療指針は、抗炎症薬は痛みと腫れを抑える場合がある一方、合併症と自然な修復過程への影響に注意が要るとしている。市販薬を含む使用の可否は、持病と常用薬を伝えて医師または薬剤師へ確認し、処方薬を自己判断で増減・中止しない。

足首をクッションで高くし、弾性包帯で軽く圧迫する様子(イメージ)

完全安静を長引かせず段階的に荷重

骨折などが除外され、医療者から固定や免荷を指示されていない場合は、完全安静を長く続けない。痛みと腫れが増えない範囲から足を着き、歩行距離を少しずつ戻す。翌日に痛みや腫れが明らかに強まるなら負荷を下げ、歩けない状態が続く場合は再評価を受ける。

2021年の足関節外側捻挫診療指針をまとめた患者向け資料は、必要に応じて装具やテーピングなどの外的支持を使い、患側へ段階的に荷重し、可動域・筋力・バランスの問題に合わせて運動を組むよう示している。これは受傷直後から痛みを押して歩く意味ではなく、損傷の程度を確かめた後の機能回復である。

スポーツ復帰は「何日たったか」だけで決めない。日本整形外科学会は、日常生活に支障がなくなっても直ちに元の競技水準へ戻ると再受傷の危険があり、低下した運動機能を戻すリハビリテーションが必要だとしている。痛みと腫れ、足首の動き、筋力、片脚でのバランス、競技動作を順に確認する。

腫れた足首に保冷剤を長時間当て続ける例(イメージ)

子ども、妊婦、糖尿病性神経障害や常用薬がある人

子ども。 歩けるか、腫れが目立つかだけで成人と同じ判断をしない。日本整形外科学会は、子どもが触られると泣く、足に体重をかけられない場合は骨折を疑って整形外科を受診し、乳幼児では腫れが少ない例や受傷直後のX線で骨折を確認できない例もあるとしている。保護者が単純な捻挫と決めて運動へ戻さない。

妊婦。 妊婦に限定した足関節捻挫の国内公的指針は、本稿の執筆時点で確認できていない。成人一般の薬の選び方を当てはめず、常用薬の扱いも自己判断で変えない。厚生労働省は、妊娠中は市販薬にも使用できないものがあり、服用開始や処方薬の中断を自分で決めず、医師または薬剤師へ相談するよう示している

糖尿病性神経障害や足の血流障害がある人。 厚生労働省の健康情報は、日本糖尿病学会監修の下、糖尿病性神経障害では足先の感覚が鈍くなり、血流障害が重なると傷の発見が遅れる場合があると説明している。この感覚低下から、冷却や強い圧迫による皮膚障害にも気づきにくいと考えられる。自己判断で冷却や圧迫を始めず、足の傷、赤み、腫れがあれば早めに主治医へ連絡する。

持病や常用薬がある人。 痛みが軽くても処方薬を増減せず、市販薬を加える前に医師または薬剤師へ確認する。受診時はお薬手帳を持参し、受傷時刻、腫れや皮下出血の広がり、歩けたかを伝える。

足首を痛めた子どもに保護者が付き添う様子(イメージ)

よくある質問

足首をひねったら必ず冷やすのか
必須とは言い切れない。冷却を使うなら短時間の痛みの緩和を目的とし、タオル越しに15〜20分以内とする。変形、足先の色や感覚の異常、歩けない状態があれば冷却より受診を優先する。

PEACE & LOVEはRICEに代わる新しい標準なのか
2019年の論説が提案した枠組みであり、診療ガイドラインそのものではない。国内学会資料にはRICEも掲載されており、冷却を一律に避ける扱いが日本の標準になったとは確認できない。

いつから足を着いてよいか
骨折など重い損傷が除外され、固定や免荷の指示がなければ、受傷後1〜3日の保護を目安にしつつ、症状が許す時点から段階的に荷重する。痛みを押して歩かず、翌日に痛みや腫れが増す場合は負荷を戻す。

腫れが引けば受診しなくてよいか
腫れだけでは決めない。骨の上の強い圧痛、歩行困難、関節の不安定感、痛みの悪化や長期化があれば整形外科で評価を受ける。