1歳半の子どもが一食で野菜を拒んでも、それだけで栄養不足とは判断できない。見る範囲は一週間ほどの食事全体、普段の活動性、身長・体重の推移、噛む・飲み込む様子である。食卓での対応を始める前に、救急や小児科につなぐ兆候を切り分ける。
先に確認する119番と早期受診の兆候
食事中に激しくせき込み、ぜいぜいして呼吸が苦しそう、呼吸が弱い、唇が紫色、顔色が明らかに悪い場合は119番へ連絡する。激しい下痢や嘔吐で水分が取れず、食欲がなく、意識がはっきりしない場合や、嘔吐が止まらない場合も待たない。厚生労働省の救急車利用案内は、これらの呼吸、顔色、意識、嘔吐の異常を、子どもについてすぐに救急車を呼ぶ目安としている。
救急の兆候がなくても、食べるたびにせきやえずきを繰り返す、噛む動きが遅く不十分、食べ物が口内に残る、受け付ける食感や食品が極端に限られる、体重が増えにくい場合は、通常の好き嫌いとして家庭だけで対応せず、小児科で評価を受ける。米国言語聴覚協会(ASHA)の小児摂食・嚥下資料は、食事中のせきやえずき、遅く不十分な咀嚼、口腔内の残留、食事の種類や量の制限、体重増加不良を評価の手掛かりに挙げている。
一食ではなく一週間と発育を見る
記録するのは野菜の有無だけではない。三食と間食の時刻、飲料、食べた食品と量のおおよそ、拒んだ食感、せきやえずき、口に残す様子、活動性を一週間単位で並べる。母子健康手帳の身長・体重も日付とともに確認する。一回の測定値や一つのパーセンタイルだけで栄養状態を決めない。
食卓で変えるのは量、時間、出し方
1 最初の盛り付けを少なくする
食べる量には個人差がある。最初から完食を迫る量にせず、子どもの口の大きさと噛む力に合う少量を盛る。足りなければ追加する形にし、食べる量を子どもが調整する余地を残す。
2 食事と間食の時刻を分ける
だらだら食べを避け、食事と間食の時刻をおおむね固定する。間食は一日1〜2回を目安に時間と量を決め、食事の直前に菓子や甘い飲料で空腹を埋めない。
3 野菜は形と調理法を変えて少量出す
一度拒んだ野菜を「食べない食品」と決めず、切り方、軟らかさ、温度を変え、別の機会に少量を出す。大人も同じ食卓で食べる。口に入れるまで説得を続けたり、泣く子に無理に食べさせたりしない。
4 主食・主菜・副菜を一週間で見渡す
一食ごとの「野菜を食べたか」だけで採点せず、主食、魚・肉・卵・大豆製品などの主菜、野菜を含む副菜、乳製品や果物が一週間の中でどう重なるかを見る。特定の食品群がほぼ抜けた状態が続く場合は、管理栄養士や小児科へ相談する。
記録を1歳6か月児健診の相談材料にする
1歳6か月児健診は、偏食を一人で抱え込まず相談する入口になる。こども家庭庁は、乳幼児健診では医師、歯科医師、保健師、管理栄養士らが母子健康手帳や問診票を基に身体発育、栄養状態、発達を確認し、1歳6か月児健診では身長・体重、病気の有無、運動・言語発達、スプーンで食べる様子などを見ると案内している。家庭と保育所で食べ方が違う場合は、両方の様子を伝える。
健診日が先でも、発育曲線が横ばいまたは下向きになる、活動性が落ちる、食べられる種類が減り続ける、噛む・飲み込む問題を疑う兆候がある場合は、その日まで待たず小児科へ相談する。1歳6か月児の偏食について、食品数や拒食日数だけで受診時期を全国一律に定めた国内の公的資料は、本稿の執筆時点で確認できていない。
早産・持病・アレルギーがある子
早産、低出生体重、慢性疾患、発達や感覚の特性、常用薬、嚥下の問題がある子には、健康な幼児向けの量や食感をそのまま当てはめない。主治医や健診担当者に食事記録を示し、個別の食形態と栄養評価を優先する。
食物アレルギーの診断がある、または特定の食品後に発疹、嘔吐、ぜいぜいする呼吸などが出た場合も自己判断で除去食を広げない。こども家庭庁は、食物アレルギーを疑う症状があれば医師の指示を仰ぎ、何を、どれだけ食べ、何分後にどの症状が出たかを母子健康手帳などに記録し、食事内容は医師の判断に基づいて決めるよう案内している。
よくある質問
一日野菜を食べなければ、すぐに受診するのか
一日だけの拒食では栄養状態を決められない。一週間ほどの食事全体、活動性、身長・体重の推移を確認する。ただし、呼吸や意識の異常、止まらない嘔吐、水分が取れない状態は観察を続けず、119番の目安に沿って対応する。
何回出せば食べるようになるのか
回数を全国一律に示した国内の公的資料は確認できていない。拒んだ回数で「嫌い」と決めず、無理強いを避け、切り方や軟らかさを変えて少量ずつ別の機会に出す。
泣いたらパンや菓子へ替えてよいのか
泣いた直後に毎回別の菓子や甘い飲料を出すと、次の食事の空腹に影響する。食事と間食の時間を分け、次の予定した機会に食べられる量から出す。発育や嚥下に警告サインがある場合は、食卓の工夫だけで経過を見ない。
出典・参考資料
- 幼児期の健やかな発育のための栄養・食生活支援ガイド(国立保健医療科学院)偏食時の一週間程度の観察、発育曲線、無理強いを避ける対応、食事と間食のリズム
- こんな時は迷わず119へ(厚生労働省)子どもの呼吸、意識、嘔吐、脱水に関する119番の目安
- Pediatric Feeding and Swallowing(American Speech-Language-Hearing Association)小児の摂食・嚥下障害で確認する栄養、咀嚼、嚥下、呼吸の兆候
- 乳幼児健診について(こども家庭庁)1歳6か月児健診で確認する身体発育、栄養状態、発達と相談機能
- 乳幼児期のアレルギーについて(こども家庭庁)食物アレルギーを疑う症状の記録、自己判断による除去を避ける原則