ガザ停戦の次段階は、ハマスの武装解除とイスラエル軍撤収の順序をめぐり行き詰まっている。ベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は8月9日、米国主導の15項目案を拒否すると表明し、武装解除が完了するまでガザの現支配地域から撤収しない立場を示した。

拒否表明──「真の武装解除」まで撤収せず

AP通信によると、ネタニヤフ氏は8月9日の閣議で「イスラエルは15項目文書を拒否する」と述べ、ハマスが実際に武装解除するまでイスラエル軍は撤収しないと表明した。米国との協議は続けるとも述べ、発言直後にホワイトハウスの反応はなかった。月初の「重大な安全保障上の懸念」から、文書の拒否へ踏み込んだ形だ。

ネタニヤフ氏は同じ閣議発言で、首相在任中はガザとヨルダン川西岸にパレスチナ国家を樹立させないとの立場も改めて示した。15項目案は武装解除の実施を、パレスチナ人の自決と国家樹立に向けた道筋へつなぐとしており、この点でも隔たりがある。

15項目案──武装解除と撤収を相互履行

米国主導の和平評議会(Board of Peace)が示した15項目案は、2025年の20項目包括計画を具体化するロードマップだ。ハマスなどの武装組織は民政と治安機能をパレスチナ人の暫定統治委員会へ移し、最終的には同委員会だけがガザの武器を管理する。

公表文書は、重火器の使用停止と保管、軍事生産施設や武器庫、トンネルの解体を順次進め、その工程をイスラエル軍の段階的撤収と連動させる。和平評議会が設ける国際検証委員会が各段階の履行を確認し、国際安定化部隊(International Stabilization Force、ISF)が支援する

実施日程と手順は、全当事者の承認後14日以内に策定する構造だ。ネタニヤフ氏が文書の拒否を表明したため、その起算点には達していない。武装解除、軍撤収、国際部隊の展開のどれを先に動かすかは、なお交渉事項である。

並べて展示されたハマス製ロケット弾の残骸
武器の保管か廃棄かは、武装解除の実施方法をめぐる争点の一つとなった。(Photo by Giorgio Montersino, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons)

月初の三要求──匿名情報と公式発言を分離

イスラエル首相府のドロン・スピールマン(Doron Spielman)報道官は8月2日、ホワイトハウスへ重大な安全保障上の懸念を伝えたとAP通信に明らかにした。ハマスは停戦中も再武装と戦闘員募集を進めているとの情報評価を示し、武装解除前には軍を撤収させないと説明した。再武装や募集の判断を裏付ける資料は公開されておらず、イスラエル側の評価として扱う必要がある。

イスラエルが伝えたとされる要求は、ガザで軍事行動を続ける自由を残すこと、カタールとトルコを履行検証に参加させないこと、押収したハマスの武器を保管せず廃棄することの三つだ。ただし、AP通信が報じた三要求はいずれも交渉内容を知る匿名の関係者による説明である。イスラエル政府と米政府が項目ごとに確認した公文書ではない。

武器の最終処分は、公表されたロードマップとの違いが明確だ。15項目案は重火器や民兵組織の武器を暫定統治委員会の管理下で使用停止にし、保管する。一方、匿名の関係者によれば、イスラエル側は押収後の廃棄を求めた。検証主体と処分方法が固まらなければ、撤収開始の条件も定まらない。

停戦後の死者1250人超、集計には留保

交渉が続く間も、ガザでは攻撃による死者が出ている。AP通信が現地の病院当局を引用した集計では、8月2日までの一連の攻撃で子どもを含む少なくとも17人が死亡した。南部の集合住宅への攻撃では、4歳児を含む家族3人が死亡したとナセル病院が報告した。イスラエル軍は武装要員を標的にしたと説明している。

AP通信は8月11日、2025年10月の停戦発効後にイスラエルの攻撃で1250人超が死亡したとのガザ保健省集計を伝えた。同省の数字は民間人と戦闘員を区別しておらず、個別の攻撃を独立機関が即時に全件確認した集計ではない。後日の通報で数字が変わる余地もある。

総選挙は10月27日、拒否の動機は断定せず

イスラエルでは10月27日に総選挙が予定されている。AP通信は、ネタニヤフ氏の極右連立相手が15項目案の拒否を歓迎し、同氏にとってハマスとの妥協が再選上の重荷になり得ると分析した。総選挙は政策判断を読む上での背景だが、拒否の直接の動機だったと裏付ける公的資料はない。

ハマス側は拒否表明後も計画への関与を続ける姿勢だ。政治局メンバーのバセム・ナイム(Bassem Naim)氏は8月9日、組織はロードマップに引き続き関与すると述べ、米国と仲介国にネタニヤフ政権への働きかけを求めた。武装解除に着手する時期や、イスラエルの攻撃停止と撤収をどの段階で求めるかは、なお決着していない。

日本は武装解除と民間人保護を併記

日本政府は2026年1月の日・イスラエル外相会談で、ハマスが包括的計画に沿って武装解除すべきだとの立場を示すと同時に、国際法の順守、ガザの民間人保護、人道支援の確保をイスラエルへ求めた。8月9日の拒否表明やイスラエル側の三要求を日本政府が個別に評価した公表資料は、8月15日時点で確認できていない。

よくある質問

ネタニヤフ首相は何を拒否したのか
和平評議会が示した15項目のロードマップを現状のまま受け入れないと表明した。米国との協議は続けるとしており、停戦協議そのものの打ち切りを宣言したわけではない。

武装解除とイスラエル軍撤収の順序はどう違うのか
15項目案は双方の措置を段階ごとに連動させる。ネタニヤフ氏は、ハマスの武装解除が実際に完了するまでイスラエル軍を撤収させない立場だ。

イスラエル側の三要求は正式決定なのか
正式決定として公表されたものではない。軍事行動の自由、カタールとトルコの検証参加拒否、押収武器の廃棄という三要求は、AP通信が匿名の関係者から得た情報である。

日本政府は15項目案をどう評価したのか
案や拒否表明を個別に評価した資料は確認できていない。日本政府は1月時点で、ハマスの武装解除を求める一方、国際法の順守、民間人保護、人道支援の確保も求めている。