米韓両軍の定例合同演習「乙支(ウルチ)フリーダムシールド(Ulchi Freedom Shield、UFS)」は8月17日、米軍の参加規模が見直される可能性を抱えたまま始まった。ドナルド・トランプ米大統領は米東部時間16日、演習の中止には遅すぎるとして、ピート・ヘグセス国防長官に米軍の参加を「大幅に縮小」するよう指示したとSNSで表明した。
韓国国防部は17日、演習が予定通り始まったと説明した。一方、18日時点で米国防総省から、削減する兵力、訓練科目、日程は公表されていなかった。当初計画が動き始めた事実と、米側の縮小指示が今後反映される可能性を分けて見る必要がある。
当初計画──11日間、韓国軍約1万8000人
韓国合同参謀本部と在韓米軍は8月10日の共同説明で、UFSを17日から27日まで実施し、韓国軍約1万8000人が参加すると発表した。例年と同程度の規模で、防御を目的とする年次演習だと説明していた。約1万8000人は韓国軍の人数で、米軍を含む総参加人数ではない。総数は同資料から確認できない。
演習はコンピューターを使った指揮所演習と野外機動訓練で構成される。共同説明によると、ドローン攻撃、衛星測位システムへの妨害、サイバー攻撃への対応をシナリオへ盛り込み、戦時作戦統制権の韓国側への移管に必要な能力と体制も米韓共同で評価する計画だった。
防衛省の2025年版防衛白書は、UFSを米韓が下半期に行う定例の指揮所演習と整理し、2022年には指揮所演習と並行する野外機動訓練が約4年ぶりに再開されたと記している。同白書は、UFSが戦時作戦統制権移管に向けた能力評価の場にもなってきた経緯を示す。縮小対象が指揮所演習か野外訓練かで、検証すべき影響は異なる。
縮小理由──北朝鮮とイランを同じ投稿で言及
トランプ氏は演習の費用を問題視し、北朝鮮へ不適切で敵対的なシグナルを送ると主張した。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記との関係が良好だとの認識も理由に挙げた。SNS投稿では、演習の軍事的な必要性や個別科目の評価を示さず、縮小という結論を先に表明した。
同じ投稿でトランプ氏は、韓国が米国によるイランの「非核化」への参加を断ったとも述べた。韓国大統領府は、ホルムズ海峡の航行の自由を回復するための実務面、軍事面の貢献について米側と協議していると説明したが、トランプ氏が示した依頼内容と韓国側の返答の詳細は公表していない。韓国政府が「協力を拒んだ」との説明を公表したことは確認できず、トランプ氏側の主張にとどまる。
韓国側の応答──同盟と自主防衛を併記
李在明(イ・ジェミョン)大統領は18日の閣議で、強固な米韓同盟が国家安全保障をさらに支えると述べ、自国の力を高めれば同盟国としての韓国の価値も上がるとの考えを示した。米韓同盟の維持と自主的な防衛力の強化を並べた発言である。
18日時点の公開資料では、韓国軍約1万8000人が参加する当初計画が変わったとは確認できなかった。ただし、この数字が維持されても米軍側の参加人数や野外訓練が減れば、演習全体の内容は変わりうる。参加人数だけで縮小の有無や訓練効果を判断するのは難しい。
2018年の先例──今回は中止ではなく縮小
トランプ氏は第1次政権でも米韓演習の費用と北朝鮮へのシグナルを問題にし、2018年6月の米朝首脳会談後には、交渉を進める間は演習を停止する考えを表明した。防衛省の白書によると、UFSと並行する野外機動訓練は2022年に約4年ぶりに再開された。
今回の指示は全面中止ではなく「大幅縮小」である。18日時点では、演習期間の変更、米軍兵力の削減数、取りやめる訓練科目が示されていなかった。2018年と同じ結果になるとの判断も、即応態勢に影響がないとの判断も、公開情報からは導けない。
日本から見る論点──日米韓訓練とは別枠
UFSは米韓両軍の枠組みであり、自衛隊が参加する日米韓共同訓練とは別である。防衛省は、2024年6月と11月に自衛隊、米軍、韓国軍が実施した複数領域の共同訓練を「フリーダム・エッジ」として整理している。UFSへの縮小指示を、そのまま日米韓訓練全体の縮小とみなす根拠はない。
今回の指示がフリーダム・エッジや日本の安全保障態勢へ及ぼす影響を説明した日本政府の公的資料は、本稿執筆時点で確認できていない。日本との関係で確認できるのは、UFSと自衛隊参加の訓練が別枠だという制度上の整理までである。
よくある質問
8月17日に演習は始まったのか
韓国国防部は予定通り始まったと説明した。当初の日程は17~27日の11日間で、韓国軍約1万8000人が参加する計画だった。
何が縮小されたのか
18日時点で確認できたのは、トランプ氏が米軍参加の大幅縮小を指示した事実までである。対象の兵力、訓練科目、日程は公表されていなかった。
自衛隊もUFSに参加するのか
UFSは米韓の演習である。自衛隊が米軍、韓国軍と行う「フリーダム・エッジ」は別の訓練として扱われている。
出典・参考資料
- 2026年UFS演習 米韓共同ブリーフィング(韓国政府政策ブリーフィング)当初の日程、韓国軍の参加人数、演習の性格、想定する脅威、戦時作戦統制権移管に向けた共同評価を示した公式説明
- Trump orders Pentagon to scale back joint exercises with South Korea(AP通信)トランプ氏の縮小指示と理由、演習開始時点の韓国国防部の説明、2018年の先例を報道
- South Korea president stresses US alliance as many baffled by Trump order to cut exercises(AP通信)李在明大統領の閣議発言、縮小範囲が未公表だった状況、韓国側の対イラン協議の説明を報道
- 令和7年版防衛白書 韓国・在韓米軍(防衛省)UFSの位置付け、野外機動訓練の再開、戦時作戦統制権移管の条件と能力評価を整理した日本政府資料
- 令和7年版防衛白書 日米に第三国を交えた多国間共同訓練(防衛省)自衛隊が参加する日米韓共同訓練「フリーダム・エッジ」をUFSとは別枠で整理した日本政府資料