英国テロ対策警察(Counter Terrorism Policing、CTP)は2026年8月20日、サルフォード在住のヘクマット・オマル・アリ・ハキム(Hekmat Omar Ali Hakim)被告を、テロ活動に関する情報を警察へ伝えなかった罪で起訴した。被告は49歳のイラク国籍で、身柄を拘束されたまま同月21日にウェストミンスター治安判事裁判所へ出廷する予定とされた。CTPは、起訴が2025年10月2日のヒートン・パーク・ヘブライ会衆シナゴーグ(Heaton Park Hebrew Congregation Synagogue)襲撃に直接関係すると説明した。
公表されたのは2000年テロリズム法(Terrorism Act 2000)38B条違反という罪名までだ。警察は、ハキム被告がどの情報をいつ把握したとみているのか、検察がどの証拠を示すのかを明らかにしていない。今回の発表は、被告が襲撃を計画または実行した罪で起訴されたことを示していない。
起訴までの経過
8月20日の発表では被告の氏名とイラク国籍が示され、身柄を拘束されたまま翌日に出廷する予定も公表された。起訴状そのものや証拠の概要は本稿の執筆時点で確認できず、被告の認否も確認できていない。
第38B条──問われるのは情報を伝えなかった行為
英国王立検察庁(Crown Prosecution Service、CPS)の一般向け解説は、情報を可能な限り速やかに警察へ伝える必要があり、伝えなかったことに合理的な理由があれば抗弁になるとしている。ただし、同ページにある最高刑5年は改正前の記載だ。英政府の2025年検証文書は、2019年反テロ・国境警備法による第38B条の最高刑引き上げが同年4月12日に施行され、現在は禁錮10年であると示している。
攻撃の準備や実行を罰する罪と、情報を伝えなかった行為を罰する第38B条は区別する必要がある。今回の公表資料では、検察がどの情報を「テロ行為の準備に関する情報」と位置づけ、被告がどの時点で把握したと主張するのかが分からない。合理的な理由の抗弁が争点になるかも未確定だ。
襲撃はユダヤ教の贖罪日に発生
メルビン・クラビッツ(Melvin Cravitz)さんとエイドリアン・ドールビー(Adrian Daulby)さんが死亡し、男性3人が重傷を負った。CTPは2026年8月20日の更新で、重傷者3人は全員退院したと明らかにした。同時点でも、警察は襲撃の全体像と関係者を特定する捜査を続けている。
出廷結果と具体的な情報は未確認
ハキム被告は8月21日にウェストミンスター治安判事裁判所へ出廷する予定とされたが、出廷結果と認否を示す公的資料は本稿の執筆時点で確認できていない。予定された期日と、実際に行われた手続きの結果は分けて扱う必要がある。
本件の起訴状や出廷結果を日本語で公表した公的資料も確認できていない。本稿はCTP、CPS、英内務省が英語で公表した資料を基に、確認できた範囲を整理した。現時点の公表資料からは、第38B条違反以外の関与を確認できない。
よくある質問
第38B条は何を罰するのか
テロ行為の防止、または関係者の逮捕・訴追・有罪認定に実質的に役立つ情報を速やかに警察へ伝えなかった行為を対象とする。合理的な理由があれば抗弁となり、2019年改正後の最高刑は禁錮10年である。
ハキム被告は会堂襲撃への参加で起訴されたのか
公表された罪名は第38B条違反であり、襲撃の計画や実行に関する別の罪名は発表されていない。情報の内容と被告が把握した時期も非公表である。
次に確認すべき手続きは何か
8月21日の出廷結果、被告の認否、今後の審理日程である。いずれも本稿の執筆時点で公的資料を確認できていない。
出典・参考資料
- Update 16:50 20 August 2026 | Manchester Attack(Counter Terrorism Policing)ハキム被告の氏名、国籍、罪名、身柄拘束、8月21日の出廷予定、襲撃との直接の関係、死傷者を示す公式更新。
- Man arrested in connection with Heaton Park Hebrew Congregation Synagogue attack(Counter Terrorism Policing)2026年5月26日の逮捕、翌日の保釈、第38B条違反容疑、捜査継続を示す公式発表。
- Terrorism(Crown Prosecution Service)警察へ情報を伝える時期と合理的な理由による抗弁を説明する公式資料。最高刑5年の記載は2019年改正前のため、現行刑の根拠には用いていない。
- Counter-Terrorism and Border Security Bill: Consideration of Bill (Report Stage): 11 September 2018(UK Parliament)第38B条が対象とする情報の範囲と、最高刑を5年から10年へ引き上げる修正内容を示す英国議会資料。
- Post-legislative scrutiny of the Counter-Terrorism and Border Security Act 2019(Home Office)2019年法による第38B条の最高刑引き上げが2019年4月12日に施行され、現行の最高刑が10年であることを示す2025年の検証文書。
- Manchester synagogue terror attack(Home Office)贖罪日に起きた襲撃の経過、車と刃物の使用、偽の爆発物、死傷者、襲撃者が警察に射殺されたことを示す議会声明。