オーストラリア連邦の「反ユダヤ主義と社会的結束に関する王立委員会」(Royal Commission on Antisemitism and Social Cohesion)は8月17日、シドニーで最後の公聴会を始めた。第9回の審理は28日までの期間に開かれ、社会的結束の測り方、人権との関係、教育分野や政府、各共同体の取り組みを扱う。設置文書は社会的結束を民主主義、自由、法の支配を支持する国民的合意と位置づけ、反ユダヤ主義や思想に動機づけられた過激主義への最も強い防御と定めている。

初日の公式名簿には、オーストラリア国立大学(Australian National University、ANU)のニコラス・ビドル氏とマシュー・グレイ氏が証人として掲載された同日の証拠目録には両氏の陳述書に加え、社会的結束と民主主義を扱う報告、6月のANUpoll(ANU世論調査)の報告が収録された。いずれも委員会が検討する証拠であり、委員会自身の結論ではない。

王立委員会は公的重要事項を扱うオーストラリアで最上位の調査制度で、情報や陳述を求め、文書の提出を命じる権限を持つ。日本の行政が設ける一般的な有識者会議とは強制力の前提が異なる。制度の位置づけと、8月上旬の公聴会で示されたオンライン環境や経済的困窮と過激化との関連は、前の記事で整理している。

民主主義への満足度は62.8%

6月のANUpollは、6月18日から7月6日までに成人3543人を調べた。民主主義の運営への満足度は3月の65.7%から62.8%へ下がり、定期的な調査が始まった2023年1月以降で最低となった。民主主義が他の統治形態より常に望ましいとする原則的支持は、2025年5月の66.9%から2026年6月の72.0%へ上がった。制度そのものへの支持が崩れたのではなく、現状の運営に対する評価が悪化した形だ。

公開公聴会の証言席とマイク(イメージ)

同じ調査では、対人信頼が0〜10の尺度で5.32となり、ANUpollが2020年代に記録した最低値だった。民主主義への満足度は、対人信頼が低い層と高い層で43.4ポイントの差があった。これは二つの指標が連動する度合いを示す数字で、信頼低下の原因を特定するものではない。

SNSへの信頼と民主主義支持

ANUの別の報告は、制度や他者への信頼が民主主義への支持・満足度と強く関連し、ソーシャルメディア(SNS)への信頼は原則的支持の弱さと関連すると分析した。高校最終学年(Year 12)を終えず、その後の教育資格もない18〜34歳では、民主主義が常に望ましいとした人が4人に1人未満だったのに対し、大卒者ではおよそ3人に2人だった。報告は、若者全体を一つの集団とみなさず、年齢と教育が重なる層に支持の弱さが集中すると整理した。

ただし、ANUの公表要旨が示すのは統計上の関連である。SNSへの信頼が民主主義への支持を下げたのか、既に制度への信頼が弱い人ほどSNSを信頼するのかは、この資料から判別できない。プラットフォーム対策が反ユダヤ主義の抑止に及ぼす効果も、委員会はまだ認定していない。

2万件超の意見、報告期限は12月14日

王立委員会は2月24日から6月14日まで意見を募り、2万件を超す提出を受け付けた。初日の証人名簿にはANUの研究者のほか、ニューサウスウェールズ州のソマリ協会、スキャンロン財団研究所、異なる文化的背景を持つ当事者らが並んだ。最終段階では、統計による測定と各共同体の経験を同じ審理の中で扱っている。

委員会は2026年1月9日に設置され、元高等法院判事のバージニア・ベル氏が委員長を務める。最終報告の提出期限は2026年12月14日である。公聴会で示された研究や証言が、SNS事業者、教育機関、政府へのどの提言につながるかは、報告が出るまで確定しない。

よくある質問

SNSが民主主義への不信を生んだと認定されたのか
認定されていない。ANUの報告が示したのはSNSへの信頼と民主主義への原則的支持の弱さとの関連で、因果関係ではない。

62.8%は民主主義を支持する人の割合なのか
違う。62.8%は民主主義の運営への満足度である。民主主義が他の統治形態より常に望ましいとする原則的支持は72.0%だった。

王立委員会の最終報告はいつ出るのか
提出期限は2026年12月14日である。8月17日に始まった第9回の公聴会は最後の審理区分だが、そこで出た証言は最終結論ではない。